2017年03月30日

僧帽弁閉鎖不全症の話 - 1:飼い主ができることの話

「心臓から雑音が聞こえます。心臓病かもしれません。検査しましょう」。

自分の愛犬・愛猫の身体検査をしていた獣医師からそんな話を聞いたら、飼い主さんは不安なきもちになるでしょう。

検査の結果、心臓が悪いことがわかったとします。結果の説明、いまの状態、自宅での注意点、薬など今後の治療・・・いろいろな話を次々と聞かなければなりません。

『この子はこれからどうなってしまうのだろう」
「私の飼い方が悪かったのかしら」
「あと何年生きられるのだろう」

うちの子が心臓病・・・ショックで落ち込んでしまう方もいるかもしれません。病院で聞いた話をご自宅に持ち帰って、ご家族で相談するかもしれません。いままでは未来のことを不安におもうこともなかったのに、これからは愛犬や愛猫がちょっと調子を崩しただけでも、「もしかしたら、心臓病が悪化したのかも」とおもうようになるかもしれません。

心臓病にかぎりません。どんな病気も飼い主さんを、こんなふうに苦しめることがあります。

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今回から病気の話をシリーズで書いていきます。でも、そんな病気の詳しい話よりも、もっと大切なことがあるとおもい、上のようなことを長々と書きはじめました。

獣医師は病気の検査や診断、治療はできます。シリーズ1回目の「僧帽弁閉鎖不全症」という病気についても、延々と話すこともできます。でも、病気の説明よりも、大切なのは、その話を受け止める飼い主さんの心のことだとかんがえています。

そんなことをクドクドと書いているのは、私が飼い主さんの心を十分にケアできていないことが、まだまだ多いとおもうからです。

飼い主さんの不安・動揺を少しでも和らげる方法、それはまず、病気のことをきちんと理解してもらうことでしょう。わからないから不安になる。獣医師と同じレベルとまではいかないとしても、大切な点だけを知っていれば、こんなときどうすればいいか、なにを気をつけて一緒に生活すればいいか、そうしたことがわかっていれば、心の準備もできます。そうした情報を伝える意味で、病気の説明をシリーズ化しようとおもいたちました。

それと同時に、飼い主さんに治療に積極的に参加してもらうことも、不安を和らげる大きな方法だとおもっています。

動物の治療は、動物病院だけでできるものではありません。いえ、ご家庭でやれることのほうがずっと多い。
あまり注目されませんが、ペットの病気において「飼い主が治療の主役」です。

毎日薬をのませること、ペットの食欲や元気さを日々観察すること、ペットの調子にあわせて散歩の時間を変えてあげること、ペットと楽しい時間を過ごしてあげて免疫力を高めてあげること・・・それは一緒にいる飼い主にしかできません。

大切なペットが病気になったとき、飼い主さんには「私が治療してあげているんだ」とおもっていただきたいと願っています。それは慰めるための方弁ではありません。大切な事実です。

病気のことを知ったとき、飼い主さんにとって一番大切なのは、どう治療にかかわっていけるかだともおもいます。まだサブタイトルは考えていませんが、「飼い主にできること」という項目をつけて、治療の主役になれるようサポートしこうと考えています。

僧帽弁閉鎖不全症の実際については、次回以降、書いていきます。

ペットが長生きになって、心臓病が身近なものになっています。毎日のように、心臓病のペットたちが来院します。そうしたペットの飼い主さんが少しでも不安を和らげられるよう、わかりやすい情報を提供するつもりです。
posted by kaihin-amc at 21:59| Comment(0) | ペットの病気

2017年03月23日

ペットが病気になったとき

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飼い主のみなさんが「動物病院に求めていることは何だろう」とおもいながら、この記事を書きはじめています。飼い主さんやペットの状態によって、期待するものはさまざまだとおもいますが、ペットが病気になったときに絞ってみれば、飼い主さんが知りたいのは「どうして吐いているのだろう」「この病気は治るのだろうか」「苦しみは取り除いてあげられるのだろうか」、そうした情報ではないでしょうか。わかりやすい、的確な情報がほしい。

そして、「わかりやすい、的確な情報」というものを、私たち動物病院のスタッフが必ずしも提供できていないのも事実です。私からすると、きちんと説明したつもりになっていても、再診のときに「前回、あんなに説明したけれど、理解していただいていなかったんだ」とおもうことが、ときどきあります。こちらが「説明したつもり」になっているだけの話で、本当にこれは反省しなければならないことです。

ペットが病気になったとき、飼い主さんは不安な気持ちでペットを病院に連れてきます。緊張もあるかもしれません。そんなときに、むずかしい病気の話を聞かされても、そのときには理解した気になっていても、帰宅したら、何も覚えていないこともあるはずです。

私自身、自分の子供が病気になったときに、聞こうとおもっていたことを聞きそびれていたり、再診はいつだっけ、なんて経験をしたことがあります。

わかりやすい説明をするのは、実は飼い主さんのためだけではありません。病気の治療には飼い主さんの協力が必要です。協力を得るには、病気のことをしっかり理解してもらうことが一番大切です。ペットの病気を治療するため、飼い主と病院スタッフが手を取り合う、そのための理解です。

さて、このブログで、少し継続的にやってみようとおもうことがあります。それは代表的な病気について、わかりやすい・正確な情報を提供することです。

インターネット上にはさまざまな情報があります。どれを信用していいか、わかりません。そこで、正確さを損なわない範囲で、わかりやすい病気の説明をまとめていきます。

腎機能低下症、僧帽弁閉鎖不全症、膝蓋骨内方脱臼など、私たちが診断することの多い、そして、なかなか短時間では話がむずかしい病気を中心に取り上げていきます。
病名から話をすることもあれば、足を痛がっている、吐いているなど、症状から話をすすめることもあります。

次回は早速、ある病気の話をします。
posted by kaihin-amc at 21:43| Comment(0) | ペットの病気

2017年03月19日

犬は人に「戦略的なウソ」をつく、実験で証明・・・とのこと

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ナショナルジオグラフィック日本版サイトに、タイトルの記事がアップされていました。対話ができない動物の能力を評価するのはむずかしいし、この実験で必ずしも「戦略的なウソ」がつけるのかどうかは証明しきれていない気もしますが、おもしろい試みだとおもいます。いろいろと考える人はいるものですね。

ただ、ある動物がどれだけ賢いか、ということについて、私は雑学としては興味はあるものの、それは大切なことだとはおもいません。犬は人間の何歳相当の知能を持っているとか、カラスは数を7前後まで認識できるとか、そういうのは「人間の尺度で、動物の知能をはかっている」だけで、その動物の真の能力をはかっているわけではない。言い換えれば、チーターが「人間というのは、がんばれば、100メートルを10秒以下で走れるみたいだよ」とか言っていたり、ハイエナが「人間ってやつは、死んだ動物の臭いを10メートルまで近づかないと気づかないらしい」と言っていたりするようなもので、そもそも、人間とほかの動物は生き方・生きている環境・生きるために必要な能力が違うわけで、比較することにあまり意味はない。

零下何十度にもなる北極圏で、身を寄せ合っていきるペンギンに人間は勝てない。蚊の体内で生きている犬糸状虫(いわゆるフィラリア)みたいには、人間は生きられない。

どんないきものだって、それぞれの環境で、それぞれに優れた性質を持っているわけで、人間の尺度でどんなに知能が劣るとされる動物であっても、私はあらゆるいきものに敬意を払いたいとおもう。

もちろん、雑学的な知識はおもしろい。それはいきものの多様性というものを知るきっかけになるから。

posted by kaihin-amc at 23:26| Comment(0) | いろいろなこと