2018年05月17日

看護師のMさんのこと

看護師のMさんに初めて会った日のことは・・・忘れた。

海浜動物医療センターに就職希望で実習に来た私はかなり緊張していただろうから、Mさんを含め、誰と何を話したかなど、残念ながら、私の脳は覚えていない。ドラマのようにはいかないものです。

でも、Mさんとの出会いは、私に劇的な変化をもたらしました。

病院でなにか問題が持ち上がると、それがどのようなものであれ、Mさんはそのことについて心を痛める。そう、「心を痛める」という表現がもっともふさわしいように、私にはおもえる。まるで自分のことのように、自分の私生活での出来事のように、病院で日々発生する問題や課題に頭を悩ます。

それは、Mさんが海浜動物医療センターをよりよい動物病院にしようと心の底から願っているから、だとおもう。どうすれば、困っている飼い主さんの助けとなるか、どうすれば、もっと飼い主さんの心に寄り添えるか。

私が休み明けで出勤したときに、Mさんが「昨日、こんなことがありました。むずかしい症例でしたが、飼い主さんの心を救えるような方法がもっとあったんじゃないかっておもっていて・・・」、そんな話をすることもあります。

Mさんに出会えたことは、私にとって、感謝してもしきれぬ幸運です。Mさんのその優しい心根や病院に対するおもいに、私は感化されつづけてきた。ともすれば、冷静になろうとしすぎて、科学的に徹しようとしすぎて、飼い主さんや動物から離れそうになることがあって、そんなとき、Mさんからの一言で、私は性急にことを進めようとしていることにはっとしたりする。Mさんの言葉や行動は、私にとってのブレーキではない。私の針路をおだやかに正すやわらかな潮風。

こんなとき、院長はどう考えるだろうか、院長だったら、困っている飼い主さんに「待っていますから、来て下さい」とどんな時間帯であってもそう声をかけるだろう。判断に迷う出来事があるとき、私は2つの観点から考えてきた。
それは(1)飼い主さんが困っているなら、力になろう、(2)院長だったらどうするだろう。そして、最近、私は(3)Mさんはどうおもうだろう、と考えるようになった。

まだまだ未熟で、飼い主さんの心に寄り添えていない私ですが、それでも、さまざまな人たちの力を得て、少しずつ成長していると信じている。Mさんはそのうちの大きな1人だ。

普段、なかなか面と向かって言えないことがある。

Mさん、いつもありがとう。そして、もう少しバランスのとれた食事をとって下さいね。
posted by kaihin-amc at 00:08| Comment(0) | 動物病院

2018年05月15日

コクシジウムと原生生物の世界

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犬・猫の腸に寄生するコクシジウムの写真です。

コクシジウム? 聞きなれない名前だとおもいます。ウィキペディアで検索すると「コクシジウム(球虫、coccidia)類は消化管などの細胞内に寄生する原生生物の一群」とありますが、「原生生物」を正確に理解できる方はどれだけいるでしょう。

そこで原生生物を検索すると「生物の分類の一つ。真核生物のうち、菌界にも植物界にも動物界にも属さない生物の総称である。もともとは、真核で単細胞の生物、および、多細胞でも組織化の程度の低い生物をまとめるグループとして考えられたもの」とあって、この説明を読んでも、すっきりしません。

そこで、「原生動物園」というサイトに飛んでみると、原生生物がすごい生物群だということがわかります。以下、サイト内からの抜粋です。

 かつて生物の世界は、生き方をもとに分類されてきました。多細胞生物か単細胞生物か、 動物か植物か、 というようにです。その流れの中で、「原生動物」とは、単細胞で動物的特徴を持つ真核生物として扱われてきました。

 しかし近年、分子系統解析という遺伝子の配列から生物の系統関係を明らかにする手法によって、原生動物をめぐる分類体系は大きく変わっています。

 原生動物は、藻類や寄生性原虫、その他菌様体制をもつ真核生物とともに「原生生物」という大きな分類群に取り込まれ、更に、その原生生物の分類は、これまで生物の世界で主流とされてきた動物・植物・菌類をも巻き込んだ、大系統分類へと向かっていきます。動物・植物・菌類とは、原生生物が分岐していった枝葉の一部に過ぎず、それを上回る多様性が原生生物の世界には眠っているというのが、現在主流となりつつある考えです。

 原生生物の多様性をもとにした大系統分類において、真核生物は7つの主要グループ(スーパーグループ)に分けられています。アメーボゾア、オピストコンタ、アーケプラスチダ、ストラメノパイル、アルベオラータ、リザリア、エクスカバータです。それに加えて、未だ分類的位置の不確かな原生生物が多く存在します。
ワクワクしますね。肉眼で見えないから気づかないだけで、私たちの世界はまだまだ未知の生物に満ちているようです。

このサイトで閲覧・ダウンロードできる「付録・原生生物151 ポスター」には美しい、あるいは奇抜な形態のいきものたちの写真がのっています。獣医療になじみが深いのは「アピコンプレクサ」のグループですね。
posted by kaihin-amc at 23:22| Comment(0) | ペットの病気

2018年05月11日

『きみのためのバラ』

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予防シーズン真っ最中です。元気なペットたちがワクチン接種やフィラリア検査にやってきていますが、一方で、重い病気の動物たちを連日のように診療しています。

獣医療の限界や自分の力不足で反省することが多々あります。このブログに書こうとおもいながらも、なかなか落ち着いた執筆する時間がとれずにいます。手元に資料も用意してはいるので、次の休日にはがんばって書こうかと。

今日はたまたま美しいバラをみかけたので、写真に撮りました。

バラをみて必ず思い出す本が、池澤夏樹さんの『きみのためのバラ』です。あの日以来、何気なくみかけていた風景でさえ、全く違う意味をもつようになってしまった。きみのためのバラ・・・。世界を愛おしくおもえる小説です。
posted by kaihin-amc at 22:55| Comment(0) | おすすめの本