2017年11月01日

「希望を処方する」

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飼い主さんに重い病気のことを伝えるとき、どんな言い方をすれば希望を持ってもらえるか、言葉や表現の仕方に悩みます。悪性腫瘍だったり、重度の腎機能低下症だったり、命の危険がある心臓の病気だったり、病気の種類はいろいろです。いろいろですが、愛するペットが重い病気にかかっていることはおなじです。

私たち獣医師の言い方ひとつで、場合によっては飼い主さんは希望を失い、治療の意欲までも失うこともありえます。

検査も治療も(簡単とはいいませんが)飼い主さんの心を守ることからすれば、それほどむずかしいことではないかもしれません。検査結果はこうでした、治療にはこんな方法があります、あと◯カ月生きられる可能性があります・・・事実を事実として伝えるだけなら、機械的にできる仕事です。

事実をただ伝えるだけよりむずかしいのは、飼い主さんの心を気遣うことです。非常にきびしい状況であっても、飼い主さんに希望を持ってもらうことです。希望がないところに、治療はありません。

精神科医の中井久夫先生の言葉のなかに、「希望を処方する」というものがあるそうです。中井先生はある著書の中で、祈りながら薬を処方する、と書いていました。

毎日のように、重い病気の動物たちがやってきます。それぞれの飼い主さんに必要な言葉を選びながら説明しているつもりでも、あわただしい診療の中で、必ずしもそれを100%実現できているとはいえません。帰り道、その日にあったことを振り返りながら、いつも、こう説明すればよかったな、飼い主さんの心を傷つけたかもしれない、そんなふうに反省することがたびたびあります。

海浜動物医療センターの獣医師は少しずつでも日々勉強をして、検査や治療の精度をあげていっています。それと同時に、やはり、飼い主さんの心に寄り添った診療を追求しなければならないとも感じています。

人間の医師で優れた方々は、診療技術だけがトップクラスなわけではないでしょう。患者さんを包み込むような優しさに満ちているのだとおもいます。遠い道のりですが、そのような獣医師を志したいと考えています。

検査や治療ばかりに専念せず、「希望を処方」することを忘れずにいたいとおもいます。

写真は今朝出勤時に撮った写真。東京・江戸川区、6:30ごろ、自宅そばにて。

posted by kaihin-amc at 23:24| Comment(0) | 動物病院
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