2017年11月09日

真新しい1日

緊急手術が入るかもしれないということで、水曜日の夜、子どもを寝かしつけてから、病院にむかいました。普段とは逆方向の移動に、心も体もそわそわしていた。

21時に到着したら、予想外に、病院にはまだ同僚たちがいました。遅い時間に、重症の動物がやってきたらしい。ICUで点滴治療を受けている動物をみる。K獣医師から検査結果と診断を聞いて、カルテに目を通す。気が抜けない日がつづきそうだ。

皆が帰って、点滴の音だけがする院内。

緊急手術が入ったら、O獣医師に連絡をして、2人で対応する段取りになっている。それで大丈夫だとおもってはいるが、看護師からは「夜中でも電話をしてもらえれば、私は来ますよ」という、本当にありがたい気遣いも受けている。今日も12時間、13時間勤務している看護師だが、それでも夜に馳せ参じるのは構わないという。

もちろん、副院長としては、スタッフに無理はさせたいとはおもわない。獣医療にかかわっているからなんでも自己犠牲的にやらなければならない、というのは、聞こえはいいが、いずれは無理がたたるだろう。疲労がたまれば、日中の業務に差し支えが出る。ストレスのせいで、笑顔が減るかもしれない。スタッフにも家庭があり、生活があり、大切な休日がある。私はそれを大切にしてあげたいとおもう。命を守ることを最優先にするのは当然だが、スタッフおのおのの1回しかない人生を大切にしてもらうのも、大切だ。ただ、いまはどうしてもスタッフの善意や熱意に頼っているのも事実。個々人に過度に依存しないシステムを作れればとおもうが(たとえば、夜間診療の体制確立)、なかなか簡単にはいかない。

しずかな院内でいろいろなことを考えながら、専門誌を読む。泊まりの日は意外と勉強が進む。自宅だとつい注意散漫になる。専門誌にあきたら、人の精神医学の本を読む。自分の仕事に直接関係がないので(簡単に読めるというわけではないが)ある意味では気楽に読める。零時を回ったので、疲れた夜には読むことの多い、シャーロック・ホームズの作品を読む。もう何十回と読んでいる。いわば眠る前の儀式みたいなものだ。

本をにぎったまま眠っていたらしい。夜2時にアラームが鳴る。点滴している動物を見回る。がんばっている。

緊急手術は入らず、術衣を着ることもなしに、朝を迎えた。休診日である木曜日の当番スタッフと少し話をして、8時半ごろ、病院をあとにする。風は強いが、朝日が気持ちいい。落ち葉がきらきらと輝いている。当直明けの朝はいつもおもうが、朝日がとてもきれいだ。世界が輝いている。こんなに美しい世界に生きていたんだ、と新鮮な目で世界をみることができる。

明日も休みだからね、といいながら、目覚めたら、お父さんがいなかった長男。ごめんな。自宅のドアを開ける。次男が大声を出しながら、走ってきた。長男が目を細めて、笑顔をみせる。頭をなでる。「ただいま、だいすきだよ」。真新しい1日がはじまった。



posted by kaihin-amc at 21:43| Comment(0) | 動物病院
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