2017年08月03日

「エサ皿を取り上げて、かみついてきたら、安楽死の候補になる」

食事中の犬からエサ皿を取り上げて、かみついてきたら、安楽死の候補になる。

保護した犬を家庭に引き渡すとき、その犬が安全な犬か、あるいは危険な犬か、保護施設は見極める必要があります(以下は、ニューヨークタイムズの電子版の記事によるものです)。いままで、アメリカの保護施設では、最初の一文に書いたような方法を使い、犬の危険性を評価してきたそうです(もちろん、評価方法は複数あって、エサ皿を取り上げるのは、その一つにすぎません)。

ところが、最近、エサ皿を取り上げるこの方法は信頼性に欠けるとの研究結果が出てきました。

詳細は記事をご覧いただければとおもいますが、犬の生死を左右する方法の信頼性が揺らいでいるわけで、現場ではその問題に苦慮しているようです。

学生時代、日本の愛護センターを見学したことがあります。だれも犬や猫を殺したいとおもっているわけではありませんが、人手・収容能力・予算などの問題から、現実的にはそう簡単に安楽死ゼロを実現できない。

保護している犬は多いが、いわゆる里親候補のご家族の数は少ない。そうすると、どうしても、保護している犬に優先順位をつけなければならない。私が見学したセンターは、エサ皿テストをおこなっていました。いまのその方法を踏襲しているのなら、見直す必要があるかもしれません。

posted by kaihin-amc at 21:49| Comment(0) | 動物病院

2017年08月01日

「オネアミスの翼」

自分では精一杯働いたつもりでも、今日一日、本当に飼い主のための仕事をできたのかどうか、あの判断は正しかったのか、ふと気弱になることがあります。

夜10時。病院の裏口から出て、月を見上げるときなどに、そんなことをおもう。おもう、といっても、あまり集中してものごとを考えられるエネルギーは残っていないので、正直にいえば、そんな反省というか、不安というか、それについて掘り下げて、あれこれ細かに考えることはできない。漠然におもう。

獣医大学に在学中、ある教授の言葉を思い出す。「治療は簡単。診断をつけるまでがむずかしい」。
いやいや、100%の診断を下せていても、しっかりした治療をしても、治療に反応しない動物はいっぱいいる。なにより、診断よりも、治療よりも、飼い主の不安を汲み取ったり、気持ちを共有したり、そういうことがさらにむずかしい。
真剣に仕事に取り組むとき、どんな職業のどんな仕事だって、そこに簡単な仕事はない。簡単だとおもったら、仕事を真面目に考えていないことの証拠かもしれない。

蒸し暑い帰路、(先日紹介した)K-MUSICLIFEの涼しい音楽をきいてみる。ざわついていた心がしずまるようで、ふっと心が透明になった気がする。

今日は半月だ。月だって、半分の輝きしかないことがある。

満月の明るさは、太陽の30万分の1だという文章を読んだことがあります。正しいかどうか、わかりません。
月といって思い浮かぶのは、ナショナルジオグラフィック日本版8月号の記事。
米国のIT企業グーグルがスポンサーとなり、Xプライズ財団が運営する月面探査レース「グーグル・ルナ・Xプライズ」、民間の資金で初めて月面に探査機を送り込み、高解像度の動画と静止画像を地球に送信することがミッションだ。このレースに世界の5チームが挑み、一番先にミッションを達成したチームが賞金2000万ドル(約22億円)を手にする。
ファイナリスト5チームの1つは、日本のチーム、HAKUTOだ。
探査機はロケットで打ち上げる。
ロケットで思い出すのは、アニメ映画「オネアミスの翼」。非常に優れた作品で、打ち上げシーンは何度みても、感動する。

posted by kaihin-amc at 22:29| Comment(0) | 動物病院

2017年07月24日

注意喚起:「マダニ感染症、猫から感染 女性死亡」

ペットを飼っている方、野良猫などと接触する方に、厚生労働省から注意喚起のリリースが発表されています。厚労省のリリースはわかりづらいとおもいますので、日本経済新聞社の電子版より記事を引用いたします。
 厚生労働省は24日、野良猫にかまれた50代の女性がマダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」を発症し、10日後に死亡していたと発表した。かまれたことが原因とみられ、猫からヒトへの感染事例が明らかになるのは初めて。
 厚労省や国立感染症研究所によると、女性は西日本に在住。昨年、衰弱した野良猫を動物病院に連れて行こうとして手をかまれた。数日後にSFTSを発症したという。女性がダニにかまれた形跡はなく、感染研は野良猫が最初に感染し、女性にうつしたとみている。
 これまでSFTSは森林や草地に生息するマダニに人が直接かまれることで感染すると考えられていた。
 厚労省は今年に入り、SFTSウイルスに感染し、発症した飼い猫と飼い犬も確認。感染はまれで、屋内で飼っている猫にはリスクはないとしているが、屋外にいる体調不良のペットに接触する場合は注意するよう呼び掛けている。

リリースでは「これらの事例は、稀な事例」とされていますが、「発症したネコやイヌの体液等からヒトが感
染することも否定できない」としています。

今回発症した猫の詳細な獣医学的な情報を知りたいところです。
なお、臨床獣医師や看護師などに対しては、以下の通知がなされています。
1 明確な基準はないが、患畜において発熱、白血球減少症、血小板減少症、食欲消失等の症状が認められ、さらに入院を要するほど重症(自力採餌困難等)で、かつ他の感染症が否定された場合に、SFTS ウイルスの感染についても疑う。
※確定診断にはウイルス学的な検査が必要です。検査方法等、技術的な内容の相談は 国立感染症研究所(info@niid.go.jp)にお問い合わせください。
2 SFTS ウイルスに感染した疑いのある患畜の取扱にはPPE(手袋・防護衣等)により感染予防措置をとり、汚物等を処理する際には次亜塩素酸ナトリウム含有消毒剤による処理やオートクレーブなどの加熱滅菌処理を行う。
3 日常的な対策としては、飼育ネコ・イヌを介した感染はまれと考えられること、屋内飼育ネコについてはリスクがないことから、過剰に飼育者の不安をあおらないように配慮しつつ、飼育者に対するダニの駆除剤投与についての指導を徹底し、飼育者は、ネコ・イヌの健康状態の変化に注意し、体調不良の際には動物病院を受診することを勧奨する。

診断基準が定まっていない点が、獣医師にとってむずかしい問題になりそうです。「発熱、白血球減少症、血小板減少症、食欲消失等の症状」は、あるタイプの免疫疾患に特徴的な所見ですし、「他の感染症が否定された場合」というのも、病原体の遺伝子検査の結果が出るまでには時間がかかりますから、その間の対応に苦慮しそうです。

ともあれ、咬まれないようにする、体調が悪そうなら受診する、といったことは、特別なことではありませんから、基本的なことをまずはこころがければいいのでしょう。

取り急ぎ、情報提供まで。
posted by kaihin-amc at 23:24| Comment(0) | 動物病院