2017年06月24日

何年かぶりに来院する飼い主さん

「飼うつもりはなかったんだけど、ひとめぼれして」

ときおり、何年かぶりに来院される飼い主さんがいらっしゃいます。先代の犬や猫の最期を看取ってから、なかなかあたらしい動物を飼うことができずにいて、それでも、少しずつかなしみがやさしい思い出に変わったり、心が整理されたりしてきて、ひょっとしたきっかけで、再びペットとの生活をはじめる。とてもいいことだとおもいます。

私の実家も18歳の雑種猫が亡くなってから、しばらくは猫が不在のときがありました。ある日、帰省したら、いつの間にか小さな雌猫がいたことがあります。

死ぬことはかなしいことです。それはどうしようもないことです。ときに、そのかなしみは暴力的なまでに、私たちの心を苦しめます。それでも、いつか時間がかなしみをいやして、あのペットたちとのしあわせな時間を、私たちは懐かしむようになります。

私がいつか行きたいとおもっているインドはジャンムー・カシミールのラダック地方の人々は、死ぬことはおおいなるものに戻ることであって、かなしむことではない、という考えを持つと聞いたことがあります(最近の急速な「近代化」によって、そうしたゆたかな文化は失われつつあるそうです。『懐かしい未来』という本に詳しいです)。

ともあれ、あたらしいペットを迎えることは素敵なことです。ひさしぶりに、懐かしい飼い主さんと再会できることも、動物病院のスタッフにはうれしいことです。

「おひさしぶりです。あたらしい子が来たんですね!」


posted by kaihin-amc at 17:16| Comment(0) | 動物病院

2017年06月21日

天気の変わり目には注意

更新が滞っておりました。ブログでの情報発信を大事な仕事だと考えていますが、日々の診療で手一杯のこともあって、なかなか記事を書けずにいました。

急に湿度や気温があがったせいでしょうか、心臓や呼吸の病気で苦しむ動物たちがめだっています。連日のように肺水腫(肺に水がたまって、呼吸困難におちいる。命の危険がとても高い病気)になった犬がやってきています。咳が止まらない動物もいます。

気圧や天気の変わり目には、持病が悪化したり、発作をおこしたりすることがあります。明日木曜日は休診日ですが、困ったことがあったら、早めにご連絡下さい。当番の獣医師、あるいはグループのはせがわ動物病院の獣医師が診察いたします。

posted by kaihin-amc at 22:41| Comment(0) | 動物病院

2017年06月12日

「癌になった医師は化学療法を受けるのか」

「先生がこの子の飼い主だったら、どうしますか?」

ときおり、こんな質問を受けることがあります。

むずかしい病気にかかった動物の検査や治療。それにはリスクやお金がかかることもあります(たとえば、発作をおこしている動物の原因追求には、全身麻酔下のMRI検査が必要なことがあります)。検査をして、必ずしも原因がわかるわけではない。

だから、飼い主さんは「いろいろ負担をかける検査は・・・」「もう高齢だからなあ」と検査や治療をすることに悩みます。

悩んでも、どうすればいいかわからない。そんな飼い主さんの中には、冒頭の質問をなさる方がいます。
私は自分の獣医学的知識と個人的な意見を交えて、「私なら・・・」と正直にこたえます。むしろ、そうした質問をして下さるほうが、実は話がしやすい。
獣医師というときには冷たい存在から、私という個人としての話ができるからです。それが本当にいいのかどうか、単純に獣医師の個人的な価値観を披露していいのかどうか、そこには高度な議論が必要なのかもしれませんが、悩んでいる飼い主さんを前に、おもうところを正直に話すことは、多少でも助け舟を出すことになるのではないか、ともおもっています。

獣医師にとって、ある検査をして原因がはっきりしなければ、次の検査に進み、そうした正しい手順を踏むことは間違ってはいない。というよりも、獣医師からすれば、それは正しいとか間違っているとかではない。必要か不要か、ということですが、科学的に正しい手順が、飼い主とペットにとって、必ずしもしあわせにつながるとはかぎりません。そこを読み取ることも、獣医師の仕事ですが、それがまた、むずかしい。

少し話は変わりますが、日経メディカルオンライン版に、こんな記事がのっていました。

「癌になった医師は化学療法を受けるのか」

おおまかにまとめると、大森赤十字病院の佐々木槇第一外科部長の調査では、医師や薬剤師が癌患者になったときに、「胃癌の補助化学療法では10人に1人、進行・再発胃癌では実に4人に1人が化学療法に対して消極的に考えている」という。

いざ自分のことになると、他人にはすすめていた治療法は選択しない。いろいろと考えさせられる記事です。

検査の話にしろ、治療の選択にしろ、どんなに獣医師が客観的情報を提供しても、それだけでは不十分だとおもいます。新人のころにはわからなかったことが、やっとわかってきた気がします。

佐々木医師がおっしゃっているように「患者(動物病院では飼い主)の希望にも耳を傾け、寄り添った治療」をすることが重要なのでしょう。

当院の院長は常々、「飼い主の心に寄り添って下さい」と口にします。それを実現できていないことも多いのですが、自分が飼い主さんだったら、という意識をもっとも大切にしたいと考えています。





posted by kaihin-amc at 16:59| Comment(2) | 動物病院