2017年10月30日

「動物たちの箱舟』

子犬や子猫、子うさぎ・・・病院にやって来る幼い動物たちはとてもかわいらしい。やわらかで、眼も毛も光沢感があって、まぶしいほどです。

かわいいなあ、とおもうと同時に、犬でも猫でも、人間とは違う形の見事さに不思議だなあ、美しいなあと感じます。

どんないきものでも、その生き方や生息環境に適した形や色をしています。それは私たち哺乳類だけではない。昆虫も魚も鳥も。

ジョエル・サートレイ『PHOTO ARK 動物たちの箱舟 絶滅から動物を守る撮影』はそうした動物たちの美しさを切り取った写真集です。絶滅の危機に瀕しているいきものたちを、写真で残そうという写真版ノアの箱舟。世界中の施設にいる動物たち1万2000種を25年かけて撮影するプロジェクトで、その一部が写真集となったそうです。アマゾンなどで一部を閲覧できるので、ぜひ。
地球上には30万種前後の植物が存在するが、命名され、分類されているのは全体の3分の2あまりだ。一方、動物は120万種が発見されているが、この数は氷山の一角に過ぎないと考えられている。現在までに発見された動物の95%以上は無脊椎動物で、そのほとんどは昆虫だ。
脊椎動物は、魚がおよそ3万種、両生類6000種、爬虫類8250種、鳥類1万種、哺乳類5420種といわれ、すべてを足しても6万種に満たない。それに対し、甲虫は35万種も確認されている。このように、脊椎動物は地球上に暮らす生物種のほんの一部なのだが、私たちには脊椎動物こそが主役のように映る。それは、身体的特徴や行動パターンが人間と似ているからだろう。人間の遺伝子の70%以上は魚と同じで、80%以上がオオカミや野生のラクダと同じだ。これらの背骨を持つ動物たちは私たちの親戚であり、広い意味では一つの家族、ひいては私たちの分身ともいえる。未曾有の激しい変化が起こっている今の時代、私たち自身の行く末も心配だが、私はこれらの生物の未来にも不安を感じる。(同書、ダグラス・H・チャドウィック氏の寄稿文より)
少しかたい話になりました。かたい話ですが、とても大切なことですよね。

ところで、飼い主さんから「好きな動物は何ですか」と聞かれることがあります。どの動物もそれぞれの美しさがあって好きですが、特に好きなのはザトウクジラ、冬のオオカミです。学生時代はニホンイノシシの研究にかかわっていました。
posted by kaihin-amc at 22:52| Comment(0) | おすすめの本

2016年07月14日

「コアラの赤ちゃんが何を食べるか知っている?」 『せかいの動物』

k20160712c.jpg

「同じものしか食べない動物が健康なのはどうして?」
「動物の目はどれくらいよく見えるの?」
「動物の赤ちゃんは、どれくらいおなかの中にいるの?」
「動物の子どもはいつまで親と暮らすの?」
「一匹狼って本当にいるの?」
「どうしてシカの角は毎年、生えかわるの?」
「アザラシとアシカの見分け方は?」

子どもたちが感じる、動物に関する疑問。それをきれいな写真とQ&A形式で解説しているのが『プチペディアブック せかいの動物』です。素朴な疑問だけに、かえって知らないことも多い。解説は一つの疑問を通して、動物の解剖学的な、あるいは生態学的な見事さを伝えることに成功していて、単なる雑学の寄せ集めではないのがいいです。

私が気になったのは「コアラの赤ちゃんが何を食べるか知っている?」「一匹狼って本当にいるの」の2つ。最初の疑問に対するこたえは「母親の肛門に口をつけてパップという特別なふんを食べる」。その理由については本をぜひ読んで下さい。

オオカミは私がすきな動物のひとつです。動物はそれぞれに美しいとおもいますが、厳冬のオオカミの美しさはきわだっています。洋書ですが Denver Bryan " Call ot the wolf " はオオカミ・コヨーテの遠吠えなどを収録したCDがついている、その筋ではとても有名な本。とてもおすすめです。

k20160712b.jpg

プチペディアブックはシリーズになっていて、『にほんの昆虫』というものもあります。カブトムシのサナギの写真が目をひきます。
posted by kaihin-amc at 11:28| Comment(0) | おすすめの本

2016年06月23日

世界で一番美しい土地 ギリシャ写真集『心の旅』

20160622.jpg

150カ国以上を旅した知人が言っていました。

「世界で一番美しいのは、エーゲ海の島々、そして、冬のアラスカだよ」

私は10年以上前、エーゲ海のサントリーニ島を旅行しました。

知人がいっていたように、とても美しかった。

日差しが強い日中は、建物の白・空の紺碧・海の紺青が絵のようなコントラストを描きます。それはそれで印象的ですが、心に残ったのは、空と海の境界がまだはっきりしない、朝もやでやわらかに包まれる風景だったり、日が沈みはじめて、オレンジの街灯がともりはじめる夕と夜の境界だったり、つまりはステレオタイプ的なエーゲ海の風景ではないものでした。

何日目だったか、目覚めて、宿泊したコテージの小さなドアを出ると、初老のオーナーが椅子にすわって、しずかに早朝の海をながめていました。
そのころ、私の毎日は殺伐としていました。帰宅はいつも真夜中を過ぎて。深夜のファミリーレストランで遅い夕食をかきこみ、帰宅して数分でもいいから、本を読みながら、そのまま眠るのがささやかな楽しみでした。朝を味わうなど、願ったことすらなかったとおもいます。

財政破綻したギリシアの人々の生活がどうなったか、私にはわかりませんが、あのオーナーのような生活がまだ残っていることを願っています。資本主義とグローバリゼーションが前提の世界となって、世界はすこしずつ均質化しているのではないかとおもうことがありますが、世界は多様性に満ちていることも信じたいところです。

そして、表題の写真集。増見芳隆さんの写真は、私がみたギリシアの風景とおなじものです。猫と犬がいっぱい登場するので、動物の写真集としても十二分の価値はありますが(サントリーニ島では角を曲がるたびに猫と出会うかんじで、カメラを向けると、猫から近寄ってきたりします。とてもフレンドリー)、なんというか、生き方を見つめ直すというか、世界を考えなおすきっかけにもなる本でもあります。ボリューム満点で、とてもお買い得です。

サントリーニ島、またいきたいなあ。イタリアを旅したときは「お腹いっぱいになるのが残念なほど、料理がおいしすぎる」とおもいましたが、サントリーニ島では「感受性がもっとあれば、感動の深さも強さもずっとずっと増すのだろうなあ」とおもいました。
posted by kaihin-amc at 01:13| Comment(0) | おすすめの本