2016年06月07日

愛する存在を失ったとき 『くまとやまねこ』

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ある朝、くまはないていました。なかよしのことりが、しんでしまったのです。

こうはじまる『くまとやまねこ』は、大切な存在を失って、かなしみの底にいるひとに読んでほしい一冊です。文章は湯本香樹実さん、絵は酒井駒子さん。
大切な人との永遠の離別、その暴力的なまでの非情を前に、心を石にして堪え忍ぶしかないときがあります。閉め切った部屋のなかで、心を閉ざしつつあったくまを救ったのは、たった一言の言葉でした。

一緒に暮らしてきた犬や猫が、ある日、その命を終える。天寿を全うしたとしても、長い闘病の果てだとしても、愛する家族の一員との永遠の離別は、あまりにかなしいものです。

私も18歳の老猫が死んだとき、涙が止まらずに仕方がなかった。死んでから、ずいぶんたっても、外を歩いていて、突然、涙があふれるようなこともありました。ああ、あのとき、面倒臭がって、ポーの食事の用意を後回しにしたなあ(そう、ポーという名前の猫でした)、もっと触ってあげればよかったな、そんなふうに、後悔することもありました。ポーは彼の一生がそうであったように、死ぬときも小さな声を一瞬あげただけで、だれにも迷惑をかけず、しずかに逝った。そうしたいじらしい生き方・死ぬ方もまた、切ない。

動物病院ではときに、毎日のように動物の死に向き合います。悲嘆に暮れる飼い主を前に、どう言葉をかけていいか、言葉がつまることもあります。私の治療が正しかったとしても、それが明らかな寿命を迎えた結果のものだとしても、かなしみは変わらない。

ただ、私が飼い主以上にかなしむことはありえない。私は、かなしむことは、飼い主の権利だとおもうから。その領分を私が奪ってはいけない。愛することは飼い主にしかできないだろう。おなじ意味において、真にかなしむことは、飼い主にしかできないだろう、とおもう。

それでも、わずかでもいいから、飼い主のかなしみ・苦しみを和らげたいと、私たちスタッフは願っています。必ずしも、そのおもいは伝えられていないかもしれませんが、スタッフはみな、命はかけがえのないものだと日々痛感しています。そして、その死もまた、かけがえのないものだと。

飼い主が眠ったように死んでいるペットを、大切に抱いて、帰宅します。泣いているスタッフもいますが、一見、平然としているスタッフもいます。私は多分、平然とみえるかもしれません。それが職業人のふるまいとして必要だとおもうからです。でも、ときには感情に負けそうなこともあって、そんなときには、スタッフと目で会話をします。「うん、もうこれ以上、苦しまずにすむね。家族のみんなが迎えにきたよ。よかったね」。

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自分を救った本、いいとおもった本などを不定期に紹介していきます。
posted by kaihin-amc at 23:32| Comment(8) | おすすめの本