2018年05月15日

コクシジウムと原生生物の世界

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犬・猫の腸に寄生するコクシジウムの写真です。

コクシジウム? 聞きなれない名前だとおもいます。ウィキペディアで検索すると「コクシジウム(球虫、coccidia)類は消化管などの細胞内に寄生する原生生物の一群」とありますが、「原生生物」を正確に理解できる方はどれだけいるでしょう。

そこで原生生物を検索すると「生物の分類の一つ。真核生物のうち、菌界にも植物界にも動物界にも属さない生物の総称である。もともとは、真核で単細胞の生物、および、多細胞でも組織化の程度の低い生物をまとめるグループとして考えられたもの」とあって、この説明を読んでも、すっきりしません。

そこで、「原生動物園」というサイトに飛んでみると、原生生物がすごい生物群だということがわかります。以下、サイト内からの抜粋です。

 かつて生物の世界は、生き方をもとに分類されてきました。多細胞生物か単細胞生物か、 動物か植物か、 というようにです。その流れの中で、「原生動物」とは、単細胞で動物的特徴を持つ真核生物として扱われてきました。

 しかし近年、分子系統解析という遺伝子の配列から生物の系統関係を明らかにする手法によって、原生動物をめぐる分類体系は大きく変わっています。

 原生動物は、藻類や寄生性原虫、その他菌様体制をもつ真核生物とともに「原生生物」という大きな分類群に取り込まれ、更に、その原生生物の分類は、これまで生物の世界で主流とされてきた動物・植物・菌類をも巻き込んだ、大系統分類へと向かっていきます。動物・植物・菌類とは、原生生物が分岐していった枝葉の一部に過ぎず、それを上回る多様性が原生生物の世界には眠っているというのが、現在主流となりつつある考えです。

 原生生物の多様性をもとにした大系統分類において、真核生物は7つの主要グループ(スーパーグループ)に分けられています。アメーボゾア、オピストコンタ、アーケプラスチダ、ストラメノパイル、アルベオラータ、リザリア、エクスカバータです。それに加えて、未だ分類的位置の不確かな原生生物が多く存在します。
ワクワクしますね。肉眼で見えないから気づかないだけで、私たちの世界はまだまだ未知の生物に満ちているようです。

このサイトで閲覧・ダウンロードできる「付録・原生生物151 ポスター」には美しい、あるいは奇抜な形態のいきものたちの写真がのっています。獣医療になじみが深いのは「アピコンプレクサ」のグループですね。
posted by kaihin-amc at 23:22| Comment(0) | ペットの病気

2017年04月20日

僧帽弁閉鎖不全症の話 - 2

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僧帽弁閉鎖不全症の話をします。

長い病名です。簡単にいえば、僧帽弁という場所に問題があって、その弁がしっかりと閉じていない状態ということです。

その僧帽弁があるのが、心臓です。

絵をご覧下さい。僧帽弁は見つかりましたか(変わった名前ですよね。ウィキペディアによると、カトリックの司教がかぶる冠に形が似ているところに由来しているそうです)。

この僧帽弁がしっかりと閉まらない=閉鎖不全におちいっている、というのが僧帽弁閉鎖不全症です。

僧帽弁が閉まりきらないと、なにが問題なのでしょう。

絵でわかるように、心臓にはいろいろな部屋や血管があって、複雑な形をしています。複雑な形はしていますが、そこを流れる血液は一方通行です。一方通行の道路を車が進んでいるイメージです。一方通行の道路を逆走する車があったら事故がおこりますよね。

心臓にとっても、血液が逆行することは困ることです。そうならないよう、心臓には僧帽弁などのパーツがあって、血液の流れをコントロールしています。

再び絵をご覧下さい。僧帽弁は左心房と左心室を隔てる「ドア」の役目を持っています。(1)左心房に来た血液は、僧帽弁を通って、左心室にいきます。(2)左心室に入った血液は大動脈に向かいます。この(2)のタイミングのとき、僧帽弁はしっかりと閉じきっているので、血液は大動脈に向かうしかありません。

ところが、僧帽弁閉鎖不全症では、(2)のときに僧帽弁が閉じきっていないので、血液が大動脈と左心房両方に流れることになります。つまり、左心房に逆流するわけです。

さて、血液が逆流すると、何が困るのでしょう。次回は困ること、つまりは症状についてお話します。

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更新が滞っていました。

自宅のパソコンのマウス・キーボードが故障して、記事を書けずにおりました(ワンパク小僧たちのしわざです)。Macの新品はかなり高いので、中古で取り寄せていました。ひさびさに打つキーボードはいいですね。スマホは苦手ですが、私はキーボード入力が好きです。

キーボードに触れたのは、ワープロ時代の中学生のころ。下手な絵や小説を友人とかいて、雑誌を作ったこともあります。あのころ親しかった友人とは何十年も連絡を取り合っていません。元気にしているだろうか。おなじように、ふとしたときに、過去を思い出しているだろうか。

posted by kaihin-amc at 19:33| Comment(0) | ペットの病気

2017年03月30日

僧帽弁閉鎖不全症の話 - 1:飼い主ができることの話

「心臓から雑音が聞こえます。心臓病かもしれません。検査しましょう」。

自分の愛犬・愛猫の身体検査をしていた獣医師からそんな話を聞いたら、飼い主さんは不安なきもちになるでしょう。

検査の結果、心臓が悪いことがわかったとします。結果の説明、いまの状態、自宅での注意点、薬など今後の治療・・・いろいろな話を次々と聞かなければなりません。

『この子はこれからどうなってしまうのだろう」
「私の飼い方が悪かったのかしら」
「あと何年生きられるのだろう」

うちの子が心臓病・・・ショックで落ち込んでしまう方もいるかもしれません。病院で聞いた話をご自宅に持ち帰って、ご家族で相談するかもしれません。いままでは未来のことを不安におもうこともなかったのに、これからは愛犬や愛猫がちょっと調子を崩しただけでも、「もしかしたら、心臓病が悪化したのかも」とおもうようになるかもしれません。

心臓病にかぎりません。どんな病気も飼い主さんを、こんなふうに苦しめることがあります。

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今回から病気の話をシリーズで書いていきます。でも、そんな病気の詳しい話よりも、もっと大切なことがあるとおもい、上のようなことを長々と書きはじめました。

獣医師は病気の検査や診断、治療はできます。シリーズ1回目の「僧帽弁閉鎖不全症」という病気についても、延々と話すこともできます。でも、病気の説明よりも、大切なのは、その話を受け止める飼い主さんの心のことだとかんがえています。

そんなことをクドクドと書いているのは、私が飼い主さんの心を十分にケアできていないことが、まだまだ多いとおもうからです。

飼い主さんの不安・動揺を少しでも和らげる方法、それはまず、病気のことをきちんと理解してもらうことでしょう。わからないから不安になる。獣医師と同じレベルとまではいかないとしても、大切な点だけを知っていれば、こんなときどうすればいいか、なにを気をつけて一緒に生活すればいいか、そうしたことがわかっていれば、心の準備もできます。そうした情報を伝える意味で、病気の説明をシリーズ化しようとおもいたちました。

それと同時に、飼い主さんに治療に積極的に参加してもらうことも、不安を和らげる大きな方法だとおもっています。

動物の治療は、動物病院だけでできるものではありません。いえ、ご家庭でやれることのほうがずっと多い。
あまり注目されませんが、ペットの病気において「飼い主が治療の主役」です。

毎日薬をのませること、ペットの食欲や元気さを日々観察すること、ペットの調子にあわせて散歩の時間を変えてあげること、ペットと楽しい時間を過ごしてあげて免疫力を高めてあげること・・・それは一緒にいる飼い主にしかできません。

大切なペットが病気になったとき、飼い主さんには「私が治療してあげているんだ」とおもっていただきたいと願っています。それは慰めるための方弁ではありません。大切な事実です。

病気のことを知ったとき、飼い主さんにとって一番大切なのは、どう治療にかかわっていけるかだともおもいます。まだサブタイトルは考えていませんが、「飼い主にできること」という項目をつけて、治療の主役になれるようサポートしこうと考えています。

僧帽弁閉鎖不全症の実際については、次回以降、書いていきます。

ペットが長生きになって、心臓病が身近なものになっています。毎日のように、心臓病のペットたちが来院します。そうしたペットの飼い主さんが少しでも不安を和らげられるよう、わかりやすい情報を提供するつもりです。
posted by kaihin-amc at 21:59| Comment(0) | ペットの病気