2017年04月20日

僧帽弁閉鎖不全症の話 - 2

Diagram_of_the_human_heart_(cropped)_ja.jpg

僧帽弁閉鎖不全症の話をします。

長い病名です。簡単にいえば、僧帽弁という場所に問題があって、その弁がしっかりと閉じていない状態ということです。

その僧帽弁があるのが、心臓です。

絵をご覧下さい。僧帽弁は見つかりましたか(変わった名前ですよね。ウィキペディアによると、カトリックの司教がかぶる冠に形が似ているところに由来しているそうです)。

この僧帽弁がしっかりと閉まらない=閉鎖不全におちいっている、というのが僧帽弁閉鎖不全症です。

僧帽弁が閉まりきらないと、なにが問題なのでしょう。

絵でわかるように、心臓にはいろいろな部屋や血管があって、複雑な形をしています。複雑な形はしていますが、そこを流れる血液は一方通行です。一方通行の道路を車が進んでいるイメージです。一方通行の道路を逆走する車があったら事故がおこりますよね。

心臓にとっても、血液が逆行することは困ることです。そうならないよう、心臓には僧帽弁などのパーツがあって、血液の流れをコントロールしています。

再び絵をご覧下さい。僧帽弁は左心房と左心室を隔てる「ドア」の役目を持っています。(1)左心房に来た血液は、僧帽弁を通って、左心室にいきます。(2)左心室に入った血液は大動脈に向かいます。この(2)のタイミングのとき、僧帽弁はしっかりと閉じきっているので、血液は大動脈に向かうしかありません。

ところが、僧帽弁閉鎖不全症では、(2)のときに僧帽弁が閉じきっていないので、血液が大動脈と左心房両方に流れることになります。つまり、左心房に逆流するわけです。

さて、血液が逆流すると、何が困るのでしょう。次回は困ること、つまりは症状についてお話します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

更新が滞っていました。

自宅のパソコンのマウス・キーボードが故障して、記事を書けずにおりました(ワンパク小僧たちのしわざです)。Macの新品はかなり高いので、中古で取り寄せていました。ひさびさに打つキーボードはいいですね。スマホは苦手ですが、私はキーボード入力が好きです。

キーボードに触れたのは、ワープロ時代の中学生のころ。下手な絵や小説を友人とかいて、雑誌を作ったこともあります。あのころ親しかった友人とは何十年も連絡を取り合っていません。元気にしているだろうか。おなじように、ふとしたときに、過去を思い出しているだろうか。

posted by kaihin-amc at 19:33| Comment(0) | ペットの病気

2017年04月05日

こじま公園で桜をみる

k20170404c.jpg

靖国神社の桜は満開のようですが、海浜動物医療センターのまわりの桜はやっと咲きはじめたところです。気温があがってきているので、今週中にはどの枝にも桜の花が満ちるのでしょう。ワクワクします。

20170404b.jpg

桜は花を咲かせたあとに葉をつける。私の知識では、植物はまず葉っぱをつけて光合成をおこない、開花・結実のための栄養を蓄えるとおもうのですが、桜は逆の順番です。

桜と聞いて、私が思い出すのは、浮世絵とか土手のことです。浮世絵の版木は、桜の木です。かたい木質があうそうです。
桜は根を伸ばして、土をかためるので、江戸時代には土手に植えた、なんということを聞いた記憶があります。

k20170404a.jpg

樹木の陰を美しいとおもうことがあります。葉や花をつける前の、しなやかな枝がほうぼうに広がっている陰がいい。陰から、木の姿を想像するのもおもしろい。
posted by kaihin-amc at 01:07| Comment(0) | 日記

2017年04月01日

新人看護師が2名、入社しました

新人看護師が2名、入社しました。1日から早速、本格的に研修をはじめています。それぞれが描いている夢や理想にむけての第一歩です。配属は海浜動物医療センター、はせがわ動物病院に1名ずつです。

一人立ちするには時間がかかります。日々努力することの大切さを教えるとともに、一体何のために仕事をしているのか、病院の存在意義とは何か、飼い主とペットのためにできることは何か、そうしたもっとも基本的なことを常に意識しながら、仕事に取り組むよう指導していきます。

なにより、まずはみなさまにご迷惑、ご心配をかけぬようにいたします。なにか問題などがございましたら、どうぞご指摘いただければとおもいます。

上司として若手を教育することには、緊張を覚えます。上司の行動や発言が、ときにはその人の一生を左右することもあるかもしれません。緊張と期待でどきどきの新人たちが萎縮せず、しっかりと成長できるよう、手助けしていきたいとかんがえています。

posted by kaihin-amc at 22:54| Comment(0) | 動物病院

2017年03月30日

僧帽弁閉鎖不全症の話 - 1:飼い主ができることの話

「心臓から雑音が聞こえます。心臓病かもしれません。検査しましょう」。

自分の愛犬・愛猫の身体検査をしていた獣医師からそんな話を聞いたら、飼い主さんは不安なきもちになるでしょう。

検査の結果、心臓が悪いことがわかったとします。結果の説明、いまの状態、自宅での注意点、薬など今後の治療・・・いろいろな話を次々と聞かなければなりません。

『この子はこれからどうなってしまうのだろう」
「私の飼い方が悪かったのかしら」
「あと何年生きられるのだろう」

うちの子が心臓病・・・ショックで落ち込んでしまう方もいるかもしれません。病院で聞いた話をご自宅に持ち帰って、ご家族で相談するかもしれません。いままでは未来のことを不安におもうこともなかったのに、これからは愛犬や愛猫がちょっと調子を崩しただけでも、「もしかしたら、心臓病が悪化したのかも」とおもうようになるかもしれません。

心臓病にかぎりません。どんな病気も飼い主さんを、こんなふうに苦しめることがあります。

k20170330.jpg

今回から病気の話をシリーズで書いていきます。でも、そんな病気の詳しい話よりも、もっと大切なことがあるとおもい、上のようなことを長々と書きはじめました。

獣医師は病気の検査や診断、治療はできます。シリーズ1回目の「僧帽弁閉鎖不全症」という病気についても、延々と話すこともできます。でも、病気の説明よりも、大切なのは、その話を受け止める飼い主さんの心のことだとかんがえています。

そんなことをクドクドと書いているのは、私が飼い主さんの心を十分にケアできていないことが、まだまだ多いとおもうからです。

飼い主さんの不安・動揺を少しでも和らげる方法、それはまず、病気のことをきちんと理解してもらうことでしょう。わからないから不安になる。獣医師と同じレベルとまではいかないとしても、大切な点だけを知っていれば、こんなときどうすればいいか、なにを気をつけて一緒に生活すればいいか、そうしたことがわかっていれば、心の準備もできます。そうした情報を伝える意味で、病気の説明をシリーズ化しようとおもいたちました。

それと同時に、飼い主さんに治療に積極的に参加してもらうことも、不安を和らげる大きな方法だとおもっています。

動物の治療は、動物病院だけでできるものではありません。いえ、ご家庭でやれることのほうがずっと多い。
あまり注目されませんが、ペットの病気において「飼い主が治療の主役」です。

毎日薬をのませること、ペットの食欲や元気さを日々観察すること、ペットの調子にあわせて散歩の時間を変えてあげること、ペットと楽しい時間を過ごしてあげて免疫力を高めてあげること・・・それは一緒にいる飼い主にしかできません。

大切なペットが病気になったとき、飼い主さんには「私が治療してあげているんだ」とおもっていただきたいと願っています。それは慰めるための方弁ではありません。大切な事実です。

病気のことを知ったとき、飼い主さんにとって一番大切なのは、どう治療にかかわっていけるかだともおもいます。まだサブタイトルは考えていませんが、「飼い主にできること」という項目をつけて、治療の主役になれるようサポートしこうと考えています。

僧帽弁閉鎖不全症の実際については、次回以降、書いていきます。

ペットが長生きになって、心臓病が身近なものになっています。毎日のように、心臓病のペットたちが来院します。そうしたペットの飼い主さんが少しでも不安を和らげられるよう、わかりやすい情報を提供するつもりです。
posted by kaihin-amc at 21:59| Comment(0) | ペットの病気

2017年03月23日

ペットが病気になったとき

k20170323.jpg

飼い主のみなさんが「動物病院に求めていることは何だろう」とおもいながら、この記事を書きはじめています。飼い主さんやペットの状態によって、期待するものはさまざまだとおもいますが、ペットが病気になったときに絞ってみれば、飼い主さんが知りたいのは「どうして吐いているのだろう」「この病気は治るのだろうか」「苦しみは取り除いてあげられるのだろうか」、そうした情報ではないでしょうか。わかりやすい、的確な情報がほしい。

そして、「わかりやすい、的確な情報」というものを、私たち動物病院のスタッフが必ずしも提供できていないのも事実です。私からすると、きちんと説明したつもりになっていても、再診のときに「前回、あんなに説明したけれど、理解していただいていなかったんだ」とおもうことが、ときどきあります。こちらが「説明したつもり」になっているだけの話で、本当にこれは反省しなければならないことです。

ペットが病気になったとき、飼い主さんは不安な気持ちでペットを病院に連れてきます。緊張もあるかもしれません。そんなときに、むずかしい病気の話を聞かされても、そのときには理解した気になっていても、帰宅したら、何も覚えていないこともあるはずです。

私自身、自分の子供が病気になったときに、聞こうとおもっていたことを聞きそびれていたり、再診はいつだっけ、なんて経験をしたことがあります。

わかりやすい説明をするのは、実は飼い主さんのためだけではありません。病気の治療には飼い主さんの協力が必要です。協力を得るには、病気のことをしっかり理解してもらうことが一番大切です。ペットの病気を治療するため、飼い主と病院スタッフが手を取り合う、そのための理解です。

さて、このブログで、少し継続的にやってみようとおもうことがあります。それは代表的な病気について、わかりやすい・正確な情報を提供することです。

インターネット上にはさまざまな情報があります。どれを信用していいか、わかりません。そこで、正確さを損なわない範囲で、わかりやすい病気の説明をまとめていきます。

腎機能低下症、僧帽弁閉鎖不全症、膝蓋骨内方脱臼など、私たちが診断することの多い、そして、なかなか短時間では話がむずかしい病気を中心に取り上げていきます。
病名から話をすることもあれば、足を痛がっている、吐いているなど、症状から話をすすめることもあります。

次回は早速、ある病気の話をします。
posted by kaihin-amc at 21:43| Comment(0) | ペットの病気

2017年03月19日

犬は人に「戦略的なウソ」をつく、実験で証明・・・とのこと

k20170319.jpg

ナショナルジオグラフィック日本版サイトに、タイトルの記事がアップされていました。対話ができない動物の能力を評価するのはむずかしいし、この実験で必ずしも「戦略的なウソ」がつけるのかどうかは証明しきれていない気もしますが、おもしろい試みだとおもいます。いろいろと考える人はいるものですね。

ただ、ある動物がどれだけ賢いか、ということについて、私は雑学としては興味はあるものの、それは大切なことだとはおもいません。犬は人間の何歳相当の知能を持っているとか、カラスは数を7前後まで認識できるとか、そういうのは「人間の尺度で、動物の知能をはかっている」だけで、その動物の真の能力をはかっているわけではない。言い換えれば、チーターが「人間というのは、がんばれば、100メートルを10秒以下で走れるみたいだよ」とか言っていたり、ハイエナが「人間ってやつは、死んだ動物の臭いを10メートルまで近づかないと気づかないらしい」と言っていたりするようなもので、そもそも、人間とほかの動物は生き方・生きている環境・生きるために必要な能力が違うわけで、比較することにあまり意味はない。

零下何十度にもなる北極圏で、身を寄せ合っていきるペンギンに人間は勝てない。蚊の体内で生きている犬糸状虫(いわゆるフィラリア)みたいには、人間は生きられない。

どんないきものだって、それぞれの環境で、それぞれに優れた性質を持っているわけで、人間の尺度でどんなに知能が劣るとされる動物であっても、私はあらゆるいきものに敬意を払いたいとおもう。

もちろん、雑学的な知識はおもしろい。それはいきものの多様性というものを知るきっかけになるから。

posted by kaihin-amc at 23:26| Comment(0) | いろいろなこと

2017年03月16日

浅い川も 深く渡れ

k20170315.jpg

先日、実習生が来ました。臨床経験4年半の獣医師です。飼い主さんの中には、同席した彼を見かけた方もいらっしゃるかもしれません。実習生には診察の様子をみてもらうという当院の方針にご理解・ご協力いただき、ありがとうございました。

彼は海浜動物医療センターを含めて、あらたな就職先を探しているとのことです。ご縁があれば、私たちスタッフのひとりになるかもしれません。

獣医師が慣れ親しんだ動物病院を離れ、新天地を求める理由はさまざまです。規模の違う病院で働いてみたい、二次診療の現場で経験を積みたい、専門性を高めたい、開業したい・・・。どのようなものであっても、それがその人の夢というかモチベーションのようなものであれば、心から応援したいとおもっています。

それにしても、時間がたつのははやい。前回から11日が過ぎていて驚きました。僕の感覚では5日ほどでした。1日1日を大切に過ごしているつもりで、その1日も毎日中身がぎゅっとつまっているのですが、それが重なった1週間や1カ月はあっという間。

私が敬愛する星野道夫さんの著作に、こんな一文が書いてありました。日々というものの過ごし方、捉え方を見つめ直したいとおもいます。
浅い川も 深く渡れ


posted by kaihin-amc at 21:15| Comment(0) | 動物病院

2017年03月04日

「GATTACA」

k20170304.jpg

私は分厚い本に弱い。
「弱い」というのは、分厚いというだけで、その本にあこがれるというか、敬意を払うというか、参ってしまう。もっと知識を身につけなければというコンプレックスか、昔は本をほとんど読まなかったことからの反省なのか、そういう深層心理もあるかもしれませんが、こうなったのは、映画「GATTACA」の影響が大きい。

「GATTACA」は優秀な遺伝子を持った人間が優遇され、そうではないものが不適格者として生きなければならない近未来の世界を描いた作品です。
さまざまな病気の発生リスクや寿命まで予測された主人公(イーサン・ホーク主演)が、自身を適格者と偽って、夢にまでみた宇宙飛行士を目指すのですが、その主人公が持ってうまれた欠落を、死に物狂いの努力で克服しようとするシーンが出てきます。

そのなかでも、私の胸をうつのは、分厚い宇宙学の専門書を抱えながら、筋肉トレーニングで息をきらしているシーン。彼はいいます。「全部、暗記している」。

私はこの映画をみて以来、分厚い専門書をものにしたいと願うようになりました。書店にいって、洋書コーナーで宇宙や生物学で分厚いものがないか、探してみました。

見栄やかっこうつけもあるかもしれませんが、さまざまな欠落を持った人間として、努力でそれを克服しようとする姿は、私が目指すものであるとも感じて、それから、私は何冊も、獣医学の分厚い洋書を買いました。最初はわからない単語だらけで、ひたすら辞書とにらめっこしていました。ページは書き込みだらけ。それでも、鈍牛のごとく少しずつ単語を覚えていきました。生理学の教科書を読了したあと、内科学を手に取ると、意外とすらすらと読めることに気づきました。それがきっかけとなって、いろいろな科目の洋書もそれなりに理解できるようになっていました。そこまで到達するのに半年はかかったでしょうか。そのきっかけを作ってくれた、この映画に感謝しています。

「GATTACA」はいまでも、ときおり、頭の中で再生されます。それは私を別世界に運びます。

アンドリュー・ニコル監督が作り出す映像美。イーサン・ホーク、ユマ・サーマン、ジュード・ロウが出演。そして、マイケル・ナイマンの音楽が泣けます。メインテーマの音楽を一瞬耳にしただけで、私の心に「GATTACA」の世界が浸み入ってきます。

posted by kaihin-amc at 22:56| Comment(0) | 映画

2017年02月26日

たまには映画の話 恋愛映画とか

k20170226.jpg

今回は映画の話。

最近はとんと映画をみていませんが、ときおり思い出す映画は幾つかあって、たとえば、印象的なシーンだったり、美しい音楽だったり、気の利いたセリフだったり、そんなものが頭のなかで映像や音像をむすびます。

「人生トップテンの映画をあげてみて」と言われたら(そんなことを聞かれることはなさそうですが)、次の作品は必ず入れておきたいとおもう。

「GATTACA」
「セント・オブ・ウーマン」
「ビフォア・サンライズ」
「素晴らしき日」
「恋愛小説家」
「いまを生きる」
「いのちの食べかた」

この中でダントツなのは、「GATTACA」。この映画については、次回お話しします。私が獣医師を目指すきっかけのひとつにもなった映画です。

恋愛映画が目立ちますね。若いころに、こうした素敵な映画をみていたら、もっとセクシーというか、女性をもっと上手にエスコートできたのだろうなあ、とおもいます。映画は人生の教科書、ほんとうにそうですね。

イーサン・ホーク主演の映画も多い。別に彼のファンだからではありません。

このなかで「いのちの食べかた」は、いのちを考えるうえで、とても勉強になったドキュメンタリー映画です。セリフもナレーションもない、映像の現場の音だけが流れる。この作品については、別の機会に触れる予定です。

もう何年も映画館に足を運んでいません。小さな子供たちには暗い映画館はむずかしい。妻に子供を預けて、一人で映画館、というのは心苦しい。いつかみんなで映画を楽しめる日が来ることを心待ちにしています。
長男はもう少しで4歳。次男はそろそろ1歳。

posted by kaihin-amc at 23:40| Comment(2) | 映画

2017年02月23日

地球外生命の可能性?

k20170223.jpg

地球から40光年はなれたところに、生命体が存在するかもしれない惑星を発見した・・・そんなニュースを耳にしました。



冷たい・暗い宇宙に孤独にうかぶ地球以外の星にも、生きものの星があるかもしれない。もしそうだとしたら、すごいことですね。

宇宙の本といえば、SF小説『星を継ぐもの』がとても面白い。細部にいたる科学的記述と思索がいいですね。

写真は国立科学博物館で撮影した細胞モデル。
posted by kaihin-amc at 22:56| Comment(0) | 動物病院