2017年11月11日

病気になるといいこともある

夜は冷え込むようになりましたね。

昨日から少し体調を崩しています。仕事をする分には差し支えがありませんが、無理はしないように気をつけています。

健康が何よりですが、病気になるといいこともあります。それは病気で苦しんでいる動物のつらさの一部を実感できるからです。のどもとすぎれば、というように、健康なときにはどうしても病気の辛さを忘れます。自分が下痢になれば、ペットの下痢にもより同情的になります。

とはいえ、やはり健康第一。今日は早めに眠って、明日に備えようとおもいます。おやすみなさい。

posted by kaihin-amc at 22:38| Comment(0) | 動物病院

2017年11月09日

真新しい1日

緊急手術が入るかもしれないということで、水曜日の夜、子どもを寝かしつけてから、病院にむかいました。普段とは逆方向の移動に、心も体もそわそわしていた。

21時に到着したら、予想外に、病院にはまだ同僚たちがいました。遅い時間に、重症の動物がやってきたらしい。ICUで点滴治療を受けている動物をみる。K獣医師から検査結果と診断を聞いて、カルテに目を通す。気が抜けない日がつづきそうだ。

皆が帰って、点滴の音だけがする院内。

緊急手術が入ったら、O獣医師に連絡をして、2人で対応する段取りになっている。それで大丈夫だとおもってはいるが、看護師からは「夜中でも電話をしてもらえれば、私は来ますよ」という、本当にありがたい気遣いも受けている。今日も12時間、13時間勤務している看護師だが、それでも夜に馳せ参じるのは構わないという。

もちろん、副院長としては、スタッフに無理はさせたいとはおもわない。獣医療にかかわっているからなんでも自己犠牲的にやらなければならない、というのは、聞こえはいいが、いずれは無理がたたるだろう。疲労がたまれば、日中の業務に差し支えが出る。ストレスのせいで、笑顔が減るかもしれない。スタッフにも家庭があり、生活があり、大切な休日がある。私はそれを大切にしてあげたいとおもう。命を守ることを最優先にするのは当然だが、スタッフおのおのの1回しかない人生を大切にしてもらうのも、大切だ。ただ、いまはどうしてもスタッフの善意や熱意に頼っているのも事実。個々人に過度に依存しないシステムを作れればとおもうが(たとえば、夜間診療の体制確立)、なかなか簡単にはいかない。

しずかな院内でいろいろなことを考えながら、専門誌を読む。泊まりの日は意外と勉強が進む。自宅だとつい注意散漫になる。専門誌にあきたら、人の精神医学の本を読む。自分の仕事に直接関係がないので(簡単に読めるというわけではないが)ある意味では気楽に読める。零時を回ったので、疲れた夜には読むことの多い、シャーロック・ホームズの作品を読む。もう何十回と読んでいる。いわば眠る前の儀式みたいなものだ。

本をにぎったまま眠っていたらしい。夜2時にアラームが鳴る。点滴している動物を見回る。がんばっている。

緊急手術は入らず、術衣を着ることもなしに、朝を迎えた。休診日である木曜日の当番スタッフと少し話をして、8時半ごろ、病院をあとにする。風は強いが、朝日が気持ちいい。落ち葉がきらきらと輝いている。当直明けの朝はいつもおもうが、朝日がとてもきれいだ。世界が輝いている。こんなに美しい世界に生きていたんだ、と新鮮な目で世界をみることができる。

明日も休みだからね、といいながら、目覚めたら、お父さんがいなかった長男。ごめんな。自宅のドアを開ける。次男が大声を出しながら、走ってきた。長男が目を細めて、笑顔をみせる。頭をなでる。「ただいま、だいすきだよ」。真新しい1日がはじまった。



posted by kaihin-amc at 21:43| Comment(0) | 動物病院

2017年11月06日

「弱いオスほどよくしゃべる」? ワオキツネザルの場合

詳細はナショナルジオグラフィック日本版サイトをご覧いただければとおもいます。

ところで、ワオキツネザルは「5−27匹の母系集団を作って暮らしてる」そうで、「劣位のオスは、群れのメスたちに叩かれたり噛まれたりします」。劣位のオスはそのような事情から群れからすこし離れて暮らしますが「不寛容なメスに叩かれるか、捕食者に襲われるかという綱渡りの日々を送っている」。

ワオキツネザルとして生きることは、とても大変そうだ。もちろん、人間として生きることだって大変ですが。
posted by kaihin-amc at 22:35| Comment(0) | 日記

2017年11月04日

やさしい歌が人の心をいやすように、人の心を救うような診察ができるなら

昨夜は病院に泊まったので、1日あけての帰宅。家族3人はすやすやと寝入っている。長男の頭をなでる。それだけで疲れが消える。熱めのシャワーを浴びて、こわばった体をいたわってみる。

今井美樹さんの歌を少しだけ聞いたら、完全にリフレッシュ。宿直の寝不足も気にならない。明日から改めてばりばり働こうとおもう。

そうそう、この曲( ”Warm Words” )は結構気に入っていて、やさしい気持ちを取り戻したいときに聞いたりします。

音楽が人の気持ちを和らげたり、救ったり、そういうことは多々あるとおもいます。たったひとつの曲が人生の苦難を手助けすることもあるでしょう。一冊の本が人を絶望から救い出すこともあるとおもいます。飼い主さんの心をあたためるような、希望を持たせるような、そんな診察ができたら・・・と夢想します。





posted by kaihin-amc at 22:27| Comment(0) | 動物病院

2017年11月01日

「希望を処方する」

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飼い主さんに重い病気のことを伝えるとき、どんな言い方をすれば希望を持ってもらえるか、言葉や表現の仕方に悩みます。悪性腫瘍だったり、重度の腎機能低下症だったり、命の危険がある心臓の病気だったり、病気の種類はいろいろです。いろいろですが、愛するペットが重い病気にかかっていることはおなじです。

私たち獣医師の言い方ひとつで、場合によっては飼い主さんは希望を失い、治療の意欲までも失うこともありえます。

検査も治療も(簡単とはいいませんが)飼い主さんの心を守ることからすれば、それほどむずかしいことではないかもしれません。検査結果はこうでした、治療にはこんな方法があります、あと◯カ月生きられる可能性があります・・・事実を事実として伝えるだけなら、機械的にできる仕事です。

事実をただ伝えるだけよりむずかしいのは、飼い主さんの心を気遣うことです。非常にきびしい状況であっても、飼い主さんに希望を持ってもらうことです。希望がないところに、治療はありません。

精神科医の中井久夫先生の言葉のなかに、「希望を処方する」というものがあるそうです。中井先生はある著書の中で、祈りながら薬を処方する、と書いていました。

毎日のように、重い病気の動物たちがやってきます。それぞれの飼い主さんに必要な言葉を選びながら説明しているつもりでも、あわただしい診療の中で、必ずしもそれを100%実現できているとはいえません。帰り道、その日にあったことを振り返りながら、いつも、こう説明すればよかったな、飼い主さんの心を傷つけたかもしれない、そんなふうに反省することがたびたびあります。

海浜動物医療センターの獣医師は少しずつでも日々勉強をして、検査や治療の精度をあげていっています。それと同時に、やはり、飼い主さんの心に寄り添った診療を追求しなければならないとも感じています。

人間の医師で優れた方々は、診療技術だけがトップクラスなわけではないでしょう。患者さんを包み込むような優しさに満ちているのだとおもいます。遠い道のりですが、そのような獣医師を志したいと考えています。

検査や治療ばかりに専念せず、「希望を処方」することを忘れずにいたいとおもいます。

写真は今朝出勤時に撮った写真。東京・江戸川区、6:30ごろ、自宅そばにて。

posted by kaihin-amc at 23:24| Comment(0) | 動物病院

2017年10月30日

「動物たちの箱舟』

子犬や子猫、子うさぎ・・・病院にやって来る幼い動物たちはとてもかわいらしい。やわらかで、眼も毛も光沢感があって、まぶしいほどです。

かわいいなあ、とおもうと同時に、犬でも猫でも、人間とは違う形の見事さに不思議だなあ、美しいなあと感じます。

どんないきものでも、その生き方や生息環境に適した形や色をしています。それは私たち哺乳類だけではない。昆虫も魚も鳥も。

ジョエル・サートレイ『PHOTO ARK 動物たちの箱舟 絶滅から動物を守る撮影』はそうした動物たちの美しさを切り取った写真集です。絶滅の危機に瀕しているいきものたちを、写真で残そうという写真版ノアの箱舟。世界中の施設にいる動物たち1万2000種を25年かけて撮影するプロジェクトで、その一部が写真集となったそうです。アマゾンなどで一部を閲覧できるので、ぜひ。
地球上には30万種前後の植物が存在するが、命名され、分類されているのは全体の3分の2あまりだ。一方、動物は120万種が発見されているが、この数は氷山の一角に過ぎないと考えられている。現在までに発見された動物の95%以上は無脊椎動物で、そのほとんどは昆虫だ。
脊椎動物は、魚がおよそ3万種、両生類6000種、爬虫類8250種、鳥類1万種、哺乳類5420種といわれ、すべてを足しても6万種に満たない。それに対し、甲虫は35万種も確認されている。このように、脊椎動物は地球上に暮らす生物種のほんの一部なのだが、私たちには脊椎動物こそが主役のように映る。それは、身体的特徴や行動パターンが人間と似ているからだろう。人間の遺伝子の70%以上は魚と同じで、80%以上がオオカミや野生のラクダと同じだ。これらの背骨を持つ動物たちは私たちの親戚であり、広い意味では一つの家族、ひいては私たちの分身ともいえる。未曾有の激しい変化が起こっている今の時代、私たち自身の行く末も心配だが、私はこれらの生物の未来にも不安を感じる。(同書、ダグラス・H・チャドウィック氏の寄稿文より)
少しかたい話になりました。かたい話ですが、とても大切なことですよね。

ところで、飼い主さんから「好きな動物は何ですか」と聞かれることがあります。どの動物もそれぞれの美しさがあって好きですが、特に好きなのはザトウクジラ、冬のオオカミです。学生時代はニホンイノシシの研究にかかわっていました。
posted by kaihin-amc at 22:52| Comment(0) | おすすめの本

2017年10月28日

土曜日はお待たせしました

また台風が近づいていますね。

天気が崩れたり、気圧の変化があったりすると、動物たちも影響を受けることがあるようです。土曜日、病院には具合の悪い犬や猫たちが何頭もやってきました。緊急対応で一般診療に人手が回らず、診察開始までお時間を頂戴した飼い主さんもいらっしゃいました。ご迷惑をおかけしました。

明日日曜日も気が抜けなさそうです。

自宅にナショナルジオグラフィック日本版11月号が届きました。私が定期購読している唯一の一般誌です。今回の特集は翼竜です。面白そうな記事があれば、こちらで紹介したいとおもいます。

The New York Times に " A Turkey-Size Dinosaur With a Raccoon-Like Bandit Mask " という記事がアップされています。翼竜は正確には恐竜ではないですが、関連ものとして。
posted by kaihin-amc at 23:35| Comment(0) | 動物病院

2017年10月26日

「コウノドリ」を少しだけみて

同僚のN獣医師から、ドラマ「コウノドリ」に登場する主人公(綾野剛さん)の、病気を告知するときの言葉というか、言い方というか、話しぶりというか、それがとても素晴らしいと聞いた。

いま、シーズン2がはじまっているようだが、シーズン1の初回を少しだけみた(次男が昼寝から覚めたので中断)。妊婦の破水、緊急帝王切開、そして産声。もうそれだけで私は泣いた。どんなふうであろうと、命が誕生することは泣かずにはいられない。出産よりすばらしいことなんて、世の中にないとおもう。

まだ、綾野剛さんの素晴らしい語り口を聞いてはいないが、少しずつでもドラマをみていこうとおもう。

ところで、休日だった今日は少しだけ読書ができた。朝、読んだのは「統合失調症のひろば編集部」編『中井久夫の臨床作法』。中井先生は私にはわからないほどの優れた精神科医だそうですが、先生の著作の数々の言葉にはうならされることが多い。文庫本でも付箋だらけになる。

この本の序文は、精神科医・星野弘先生によるもの。
「医者は患者の弁護士であらねばならない」とも先生は言った。病んでいる弱者には医者が力を貸さなければ患者に味方する者が足りないということであろう。
分野が違うとしても、素晴らしい仕事をなさっている方から学ぶことは、本当に多いです。

posted by kaihin-amc at 22:46| Comment(0) | いろいろなこと

”「病院の言葉」を分かりやすくする提案”

飼い主さんにお話をするとき、つい、専門用語を使ったり、わかりにくい言葉を用いたりすることがあって、「いまの説明は理解してもらなかったかもしれない」と反省することがあります。

私たち動物病院で働いているスタッフにとっては、病院の言葉は日常の言葉。でも、飼い主さんにとっては、検査や病気にかかわる単語は非日常のもの。しかも、ペットが病気になっているときなどには不安や心配で、獣医師や看護師の話を理解する余裕がないときもあるとおもいます。

きょう、病院スタッフの話し合いで、できるだけわかりやすい言葉を心がけようということになりました。具体的には、国立国語研究所「病院の言葉」委員会の提案を参考にしながら、私たちなりのわかりやすい説明を追求するというものです。

私が愛読する作家・安部公房さんは「主婦がスーパーに買い物にいって、自宅に帰ってくるまでに使う言葉」だけで小説を書きたい、といったようなことを発言していました。もちろん、わかりやすさを重視するとしても、正確さを損ねてはならないでしょう。

診察の場面では、わからないことがあっても、飼い主さんの立場からは「いまのはどういう意味ですか」とはなかなか質問しにくいかもしれません。そうならないよう、質問しやすい雰囲気を作ることも心がけたいとおもっています。

治療は飼い主さん、病院スタッフがともに協力して進めていくものです。そのためには、両者が検査や治療、病気についての認識を共有することが大切だとおもっています。
私たちはわかりやすい説明をするよう努力します。それでも、私たちの配慮が欠けているせいで、わかりにくい話になることもあるでしょう。そのときはぜひ質問していただければ助かります。飼い主さんから「わかりにくい」「なんとなくわかるけど・・・」といった質問・感想をおっしゃっていただけると、私たちがどこを改善していけば気づけます。私たちを教育する意味でも、遠慮せず、質問して下さいますようお願いいたします。

昨夜は病院に泊まりました。たった1日帰宅しなかっただけで、自宅がずいぶんとなつかしいものに感じられます。入院する動物たちもおなじように感じているかもしれません。

ブログは自宅で書いているので、昨夜は記事をアップできませんでした。書きたいことは山ほどありますが、思いつくままに書いていると、それこそ「わかりにくい」文章になるので、今日はここまで。

posted by kaihin-amc at 00:07| Comment(0) | 動物病院

2017年10月23日

大西秀樹さんの『遺族外来』

夕焼けをずいぶんとひさしぶりにみました。地球に生まれてよかったなあとおもう、空の美しさをみると。

愛する人を喪った人は深い悲しみに包まれるだけでなく、悲しみが大きなストレスとなって心や体に深刻な影響を与える。たとえば、うつ病になる人は一般人の3~7%に対して遺族は23%にもなる。55歳以上の男性が配偶者を失うと半年間で死亡率が40%も上昇するという。それなのに、私たちは死別の悲しみに対して、十分な知識も対応策も持ち合わせていない。
著者は、愛する人との死別で心に傷を残した遺族が、新しい生活へ踏み出せるように「遺族外来」を開設した。本書はここにやってきた遺族たちの物語である。

医師・大西秀樹さんの『遺族外来 ー 大切な人を失っても』の書評の一部です(日本経済新聞2017年10月21日付、評者・奥野修司)。

ペットロスについても、私たちはまだまだ十分な知識・知恵を持ってはいない。それでも、愛するペットを失った飼い主さんの話に耳を傾けることができます。
ベテランのT看護師は、悲しみの底にある飼い主さんの心をいたわる包容力とあたたかな心をもっていて、きっと何人もの飼い主さんをペットロスから救ってきたのではないかとおもう(私も彼女の言葉やまなざし、ふるまいに学ぶことが多い)。

悲しみを終わらせることはできない。愛する存在を失った事実は変えられない。それでも、悲しみを受け入れられる日はやって来る。私は自分の経験からそう信じています。そうした日が来るよう、私たちは少しでもお手伝いできればと考えています。



posted by kaihin-amc at 23:25| Comment(2) | 動物病院